大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(ネ)1414号 判決

控訴人が昭和二十六年十一月十二日訴外新井キクの代理人として、被控訴人との間に新井キク所有の横浜市磯子区中根岸三丁目二百六十一番地所在木造スレート葺平家建坪二十六坪九合五勺の建物を代金四十万円で売り渡す旨の契約を締結し、同日被控訴人から右代金の内金十万円を受け取つたことは、控訴人の認めるところであつて、控訴人は新井キクから右売買に関する代理権を授与せられていたものであると主張するけれども、(中略)右代理権授与の事実を認めるに足る証拠なく、また事後において新井キクの追認を得たことは、控訴人の毫も主張立証しないところである。(中略)右控訴人が新井キクの代理人名義を以てなした売買契約は本人たる新井キクに対しその効力を生ずるに由なく、被控訴人はこれがため金十万円の損失を被つたものというべく、これによる利得者は法律上の原因なくして利得したものとなすべきである。ところでいつたい何人を以て利得者となすべきであろうか。たとえ無権代理にもせよ控訴人は新井キクの代理人として右十万円を受け取つたものであり、現にこれを新井キクに交付し又は新井キクのためその正当債務の弁済に充てる等現金を交付したと同様の結果を生ぜしめているものとすれば、控訴人においてこれを自己に領得する意思がないのであるから、新井キクを利得者となすのが至当であるのであろうが、しからざるかぎり控訴人を以て利得者となすべきである。

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